会員の皆様へ――休会にあたって

お知らせ

理事長からのメッセージ

新型コロナウイルスの感染が日本国内にも拡大しておりますが、会員の皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

4月7日には東京を含む7都道府県が、続いて16日には全国に緊急事態宣言が発令されました。感染の拡大防止には人の交流を最大8割減らすことが必要であり、そのためには生きる手段である仕事までも大幅に自粛するようにとの要請で、これはある意味では戦争と肩を並べるほどの災厄と言えるのではないでしょうか。

これは人命を守るための措置であり、わが国においてはこれからが正念場であることが首相や都知事によってここ1か月毎日のように言われております。

この現状を踏まえ、当会は5月も引き続き道場をはじめ全ての修養会の一切をお休みにすることが妥当であると判断いたしました。

皆さま、この趣旨をご理解いただき、会員同士で集まる予定などがある場合も、是非取りやめていただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

さて、私たちは報恩会のお話を聴いたりご質問をする中で「天からのご意見」という言葉で教えていただくことがあります。

コロナウイルスによる災厄も、天から我々人類へのご意見ではないのか。そして外出を控えるよう要請されている今、いつもにはない時間が与えられていますが、この時間は「それが何かを考えろ」と天から与えられた時間ではないかと私には思えて仕方ありません。

私はこの災厄を、自然界の調和を崩してまでも物質的な利益の追求にひた走る人類へのご意見、鉄槌なのではないか、と考えます。私自身、日頃教えていただいているのに物の命を活かしきることを忘れている点を改めて反省しております。

しかし同時に、ライフラインが整い、清潔で豊かな生活が守られている有難さが身に沁みて思われます。自分自身が文明の恩恵に浴しているのですから誰を責めることもできません。反省し、そしてただ感謝あるのみです。

皆さまの心の拠り所であるこの会がお休みしている現在、講師の先生のお話を聴くこともできず、毎日の報道で感染者の数や医療崩壊の危機などという言葉を聞かされて不安を覚えない人はいないかもしれません。私もそのひとりです。

そのような中、日頃修養のお話を聴かせていただいている私たちは何をどう考え、何をしたらよいのでしょうか。

そのいくつかを整理して、ここにお伝えしたいと思います。

まず、いたずらに不安になってはいけません。

テレビ番組などは重要な情報源ですが、不安を煽られる一面もありますので客観的に見る姿勢が必要です。私たちは、心配をし過ぎることはいけないと教えられております。何事にも万が一の備えは必要ですが、心配の度合いが過ぎると心配したようになってしまうとまでいわれます。

法得先生は「この教えはいずれ医学が証明するときがくる」とおっしゃっています。実際、最近では心が身体に及ぼす影響の研究も盛んになり、物事に意欲的に取り組んだり明るいものの考え方をしていると脳の血流がよくなり、脳からの指令が滞りなく行き渡って免疫細胞が活性化するということが医学的にわかってきているそうです。

これとは逆に、心配や不安、怒りや不満といった陰気な思いは、身体が休息するのを妨げ、病気をはねのける免疫力を下げてしまいます。

ですから、要するにこんな時こそ「感謝して今日もにこにこ働く」のです。

これが最上で最善のことです。

嬉しい楽しい時の感謝なら誰にでも自然にできます。でも辛い苦しいときにも感謝するようにというところが肝心なのです。そして今がその時です。

人間は自分にできることしかできません。緊急事態のときも平時も同じです。

与えられた職務や家事を、今やるべきことを、それぞれが一生懸命やる。自分に与えられた責任を誠実に果たす。平常心で、淡々と、やるべきことに打ち込む。それしか、できません。

世界レベルで大きく物事を語ることが必要な時もありますが、今、この緊急事態が既に発生している現在においては、ひとりひとりが自分のやるべきことを一生懸命やるしかありません。そして有り難いことにそうして仕事に没頭している間、人間は不安を忘れることができ充実感や幸福をも味わえます。

何ものにもとらわれることなく、家族が仲良く、周囲の人も仲良く、自分よりもまず他の人のことを思って、調和し奮闘し無我の思いで働く。そこには病魔は入り込めません。

法運、法得両先生は、公という概念を大切にされました。

現在、医療従事者をはじめ、毎日の生活を支える様々な仕事に従事する人が肉体を酷使し頭を使い、心を砕いて働いてくれています。この方たちへの感謝と、無事と幸福を祈る気持ちをどうぞ持っていただきたいと思います。

直接的には知らない者同士が見えないところで複雑に関係し合い、知らない人の働きによって支えられ私たちは生きていられます。自分もまたそうして誰かを支えています。

働く時の心構えとして、これまで生きてきた恩を自分の仕事を通じて返すんだという気持ちで働きなさいと教えていただいています。ですから、今、仕事のために外に出ている方々は、コロナに感染してしまうんじゃないかという恐れもあるかもしれませんが、報恩の精神を胸に出られると良いと思います。

このウイルスは、感染しても8割が重症にはならず気付かないこともあるそうです。しかし、自分の軽率な行動から高齢者と持病のある人を死に至らしめる可能性がありますので十分な注意が必要です。

そして皆さまに、今こそご著書や報恩誌をお読みになることをお勧めします。

報恩会の書籍を読むと、どれも、その時々の自分の心の有り様で自分にちょうど必要なことが書かれていて、恐ろしいほどピンポイントで心の中に入ってきます。

真剣に読めば読むほど、より深く教えていただけることがあります。筋を追う読み物ではありませんので、一回読んだことのあるところでも、是非何度も、心を空っぽにして読んでいただきたいと思います。

十分な栄養と睡眠と手洗い、マスクの着用と清潔を守り、密集・密閉・密接を避けるなど行政の指導に従い、心の方面はご著書と報恩誌を読んでご自分の物事の捉え方や心を切り替えて、少しでも感謝の気持ちに変える努力をしていただきまして、元気にお暮しいただきたいと存じます。

この感染症が早く収まり、会員の皆さまとまた笑顔でお会いできる日を心待ちにしております。よろしくお願い申し上げます。

令和2年4月吉日

公益財団法人報恩会 理事長 長塚和宏