感謝のタネはいたるところに

報恩誌から

新型コロナウイルスの感染拡大が世界中に広がって、まだまだ収束の兆しが見えてきません。先月号の当欄で世界の感染者数を約八万五千人と記しましたが、一か月後の三月下旬、感染者数は九十万人を超えるような事態になっています。亡くなった方も約四万五千人を超え、さらなる増加の一途をたどっています。

当初の感染の中心地は中国でしたが、それが欧米に移り、米国での感染者数は世界最多の二十万人以上、特に大都市であるニューヨークでは感染者が爆発的に増え、住民に外出禁止令が出されたほか、病院ではベッドや人工呼吸器が足らなくなり、医療崩壊寸前と言われています。また、すでに医療崩壊となってしまったイタリアでは、重症者の治療に手が回らなくなり、死者数は一万三千人、致死率も世界最多となったそうです。

感染拡大の危険性は日本も例外ではありません。東京や大阪、名古屋など大都市圏を中心に全国規模での感染者数の増加が日々報道されています。感染予防対策として手洗い、うがい、マスク着用の徹底と、不要不急の外出の自粛が要請されていますが、まずはそれらを素直に実行していくことが大切でしょう。

社会的な対策としては、コンサートなどのイベントの自粛、飲食店などの休業、会社員のテレワークの実施、学校の長期の休校など、さまざまな対応が求められています。

特に政府は集団感染のリスクが高いとして、「三つの密」への注意喚起を発表しました。

  (1)換気の悪い密閉空間

  (2)多数が集まる密集場所

  (3)間近で会話する密接場面

 このような状況を避けるように、ということです。

しかし、残念ながら報恩会の道場や各地の修養会などは、それに当てはまってしまう可能性が高いと思われます。たとえ会場ではアルコール消毒などをして感染予防対策を施したとしても、会場に向かうときには電車やバスなどの公共交通機関を使わざるを得ない場合がほとんどです。

また自分自身では気にしない、平気だと思っていても、あちこち出歩くことはご家族の方々を心配させることにもなりますし、場合によっては自分自身を媒介して周りの人たちに感染を広げてしまうおそれもあるのです。

そのため、先月に引き続き、四月も沼津の道場と各地の修養会は休会することに決まりました。とても寂しい限りですが、修養に志す私たちとしては、ぜひこれを前向きにとらえていきたいと思います。不安、心配、不平、不満などのとらわれを捨て去り、平常心を取り戻すのです。

実際、学校の休校やテレワークの導入などで家にいる時間が長くなり、家族のコミュニケーションが増えたという声も多いと聞きます。また、通常とは違った生活を経験することによって、平凡な日常の有り難さも改めて感じられるかもしれません。

つらいことも多いと思いますが、感謝のタネはいたるところにあるのです。

今こそ、私たちがいつも教えていただいている、『感謝して今日もにこにこ働きましょう』『調和奮闘無我』『一心』といった報恩会の根本の教えを思い起こし、深く自分を振り返り、家庭で、社会で実行に励むときではないでしょうか。

(「報恩」令和2年4月号、巻のはじめに)